フォームの項目に迷ったら、「未入力だと、誰のどの作業が止まるか」を確かめます。「後で使うかもしれない」だけでは、申込時に答えてもらう理由が決まりません。
この記事は、申込フォームを設計・レビューする人向けの解説です。架空の勉強会を例に、必須・条件付き・任意・聞かないの4つへ整理します。作例のルールは記事側の提案で、申込率などの改善を実測したものではありません。
項目の使い道を決める
GOV.UK Design Systemは、各質問をする理由を把握し、本当に必要な情報だけを尋ねるよう勧めています。Question pages
その考え方を使い、項目ごとに次の3点を書いてみます。
- 誰が使うか:受付担当、進行役など、実際の担当者。
- 何に使うか:参加案内の送付、当日の質問選びなど、具体的な作業。
- 空欄ならどうするか:申込を受け付けられないのか、別の方法で進められるのか。
「運営で使う」だけなら、担当と作業をもう一段具体化します。誰も使い道を説明できなければ、任意欄として残す前に、項目自体を置く必要があるか検討します。
作例:勉強会の申込
この作例では、会場参加とオンライン参加を選べる勉強会を考えます。参加案内はメールで送り、会場参加者には受付用の名札を用意する運用です。
| 項目 | この作例での扱い | 判断した理由 |
|---|---|---|
| 参加方法 | 必須 | 会場の人数とオンライン案内の対象を決める |
| メールアドレス | 必須 | 参加案内の送付先。別の連絡経路を用意していない |
| 名札に載せる名前 | 会場参加のみ必須 | 名札の印刷に使う。オンライン参加では聞かない |
| 事前に聞きたいこと | 任意 | 進行役が質問を選ぶ参考にする。空欄でも申込を受け付ける |
| 会社名 | 聞かない | 受付や進行で使う予定がない |
名前は本名を要求せず、名札に載せたい表記でよい、という設定です。会社名は「任意なら残してよい」とはしていません。一方、名札が不要なイベントなら、名前を必須にする理由も見直します。
メール以外の受付を設けるなら、その経路でも参加案内を受け取れるか確認します。表の必須項目を、すべてのイベントにそのまま当てはめるための例ではありません。
条件を切り替えるとき
会場参加を選んだときだけ名前を求めるなら、途中でオンライン参加へ変更した場合も決めます。この作例では次の案にします。
- オンラインへ変えたら、名前は未入力でも進める。
- 会場へ戻したら、再び名前が必要になる。
- オンラインで確定するとき、入力済みの名前は申込データへ保存しない。
隠れた欄が空だから先へ進めない、という状態を作らないようにします。画面の必須表示と、サーバー側の受付条件を揃えることも確認対象です。
入力済みの値を切り替え中に保持するか、消すかは別の判断です。保持するなら画面に残す期間、消すなら再入力が必要になることまで決め、確認画面でも最終的に送る内容を確かめます。
必須・任意を言葉で伝える
W3C WAIのフォーム解説は、必須・任意や入力形式を伝え、項目のラベルにも必要な説明を含める方法を示しています。入力すると消えるプレースホルダーは、ラベルの代わりにはなりません。Form Instructions
GOV.UKでは、多くの場合に任意項目へ「optional」を付け、必須項目にアスタリスクを使わない方針です。これは同デザインシステムの方針で、あらゆるフォームの唯一の表記法ではありません。
この日本語の作例では、必須と任意をそれぞれ文字で示す案にします。
メールアドレス(必須)
参加案内を送ります。名札に載せる名前(会場参加では必須)
当日呼ばれたい名前を入力してください。事前に聞きたいこと(任意)
空欄でも申し込めます。
赤色や記号だけに意味を持たせず、入力前にも入力後にも区別できるようにします。任意は「空欄で進める」という意味です。入力された場合の文字数や形式に条件があるなら、その条件とエラー時の直し方は別に示します。
項目の採否を残すメモ
次は、仕様の打ち合わせに持ち込む記入例です。「必須」の一語だけで終わらせず、使う人と空欄時の扱いを残します。
項目:名札に載せる名前
利用者:会場の受付担当
使い道:参加者が指定した表記で名札を印刷する
必要になる条件:会場参加を選んだとき
空欄の扱い:会場参加は入力を求める。オンライン参加は受け付ける
条件変更時:オンラインで確定した場合、名前は保存しない
未決事項:会場→オンライン→会場と戻ったときの入力値の保持
確認担当:受付担当と開発担当
最後に、任意欄を空にした場合、条件を行き来した場合、入力後にエラーになった場合を試します。目で見た表示だけでなく、キーボード操作や読み上げでも項目名・必要条件・説明が分かるか確かめます。
入力を求める項目が決まったら、フォームのエラー表示で修正の案内を、受け入れ条件の書き方で確認する結果を具体化できます。