もっともらしい数字にも、確かめ方がある
AIが「自信80%です」と答えると、あと少し確認すれば使えそうに見えます。ただし、その80という数をどう作り、どんな質問で確かめたかが分からなければ、判断に使える確率だとは限りません。数字が細かいことと、その数字に根拠があることは別です。
2022年のこの研究は、GPT-3へ確信度を表現する追加学習を行い、算術課題CalibratedMathで検証しています。主な訓練は加減算、評価には複数の正答を持つ課題などを使いました。回答自体を固定して校正を評価した点が大切です。arXiv v2を参照し、査読済みとは断定しません。
校正は、同じ自信を持つ回答群で見る
校正の考え方は、たとえば80%と表現した回答が多数あれば、そのうち実際に正しい割合も80%に近いか、というものです。「この回答だけは80%正しい」と内容の一部を保証する意味ではありません。
次は研究結果ではなく、違いを理解する架空の10件です。自信80%の5件は「正・正・正・正・誤」。自信20%の5件は「正・誤・誤・誤・誤」。各組の正答割合は4/5と1/5なので、表示した自信と一致します。しかし全体では5/10しか正解していません。
この作例から分かるのは、集計上の自信の一致と正答率の高さが同じ性質ではないことです。たった10件で実モデルの校正が良いと認定する例ではありません。観察した割合は件数や出題の偏りでも動きます。
5分で、評価メモの列を分ける
まず紙に「問題/答え/AIが示した自信/正誤を確かめた方法/判定」の列を作ります。上の10件を入れ、自信ごとの正答割合と全体の正答率を別々に計算してください。80%の組にも誤答があることを、自分の表で見つけるのが最初の作業です。
手元のAI出力を一つ加えるなら、自分で正解を確認できる軽い課題にします。自信を聞いた時点の回答と数値を保存し、確認後に自信を聞き直した値へ差し替えません。答えが確認できないものは未確認とし、正解にも不正解にも数えません。
正誤を確認できた例だけを集めると、確認の簡単な問題に偏ることがあります。確認できた件数と未確認の件数も残し、「記録全体」と「正誤を確かめられた範囲」を分けて書きます。答えが合っていても、根拠や手順まで妥当だったとはこの記録だけでは判断できません。
自信を聞くことと、校正を改善することは違う
本文の小さな記録は、研究で用いた追加学習を再現するものではありません。「自信を正直に言って」と付け足すだけで、数値が校正されると研究から結論することもできません。モデルや課題が変われば、過去の記録をそのまま流用できるとは限りません。
実務でこの見方を使うなら、「90%以上なら無確認で採用」とすぐに線を引くより、まず自信が高かった誤答も記録に残します。必要なのは数字を増やすことではなく、その数字と結果を後で照合できる状態です。
活用のアイデア
小さく試すなら
5〜10分で、本文の架空の10件を自信80%の5件と20%の5件に分け、各組の正答割合と全体の正答率を計算する。自分のAI出力を見る場合は自信と正誤を別欄へ記録し、未確認は正答へ数えない。
役に立つ場面
「自信が高い」「正答率が高い」「自信と結果が合う」を混同せず、数値を見るときに必要な材料を区別できる。
試す前に確認すること
深めるなら
- 架空10件を自信別の2組に分け、組ごとの正答割合を計算する。
- 全体の正答率も計算し、組ごとの一致とは別欄に置く。
- 実際の出力を記録する場合は、正誤の確認方法と未確認を残す。
研究の限界
- GPT-3への追加学習と算術評価を扱う2022年の研究。現在の一般チャットの自信表明が校正されているとは言えない。
- 10件の作例は説明用で、少数の観察から実モデルの校正品質を推定する手法ではない。
- 主実験の校正改善を、正答率改善や個別回答の保証に読み替えない。