こんな人におすすめ
・チームの振り返りをもっと効果的に行いたいと思っている方
・振り返り時のファシリテーションをうまく実行したい方。
・リーダーとしてチームを改善志向にしたい方。
概要
1.ふりかえりの本質は「学習と適応」
ふりかえりは単なるミーティングではなく、問題が小さく対処しやすいうちに発見し、
チームの主体性と学習速度を向上させるための重要な儀式である。
2.成功の9割は「準備」と「構造」で決まる
ただ漫然と集まるのではなく、意図を持って場を設計する(準備ゲーである)ことが成果に直結する。
本書では以下の5つのステップによる構造化を推奨している。
1. 場を設定する
2. データを収集する
3. アイデアを出す
4. 何をすべきか決定する
5. ふりかえりを終了する
3.「感情」も重要なデータとして扱う
客観的な事実だけでなく、メンバーの「主観(つらかった、モヤっとした)」も
重要なデータとして扱うことで、チーム体験を改善し、心理的安全性を確保する土台を作る。
4.ファシリテーターは「プロセス」に責任を持つ
ファシリテーターは議論の内容(コンテンツ)ではなく、どのように話すか(プロセス)を設計する。
チームのスタンスを「非難」から「好奇心」へ変え、全員が発言できる環境を作ることが最大の役割である。
5.アクションは「エネルギー」に従う
改善策は「重要度」や「インパクト」だけでなく、チームがそれに取り組む「エネルギー(熱量)」
があるかどうかを基準に、本当に実行できる1〜2個に絞り込むべきである。
気づき・学び
「その場でやる」という即効性
アクションアイテムを議論して「後でやろう」と決めるだけでは不十分です。
「ひとつだけ今やること」を決めて、その場・その日に小さく実行してしまうというアイデアは非常に効果的です。
鉄は熱いうちに打てと言うように、改善活動を先送りせず、チームに勢い(モメンタム)をつけるための最良のハックだと思います。
抵抗されるなら、名前を変えればいい
抵抗:「うちはアジャイルやスクラム開発じゃないから、ふりかえりは必要ない」
回答:「なら『ふりかえり』と呼ばずに導入すればいい」
名称や形式にこだわるあまり導入が阻まれるのは本末転倒です。
「検査と適応」という本質さえ守れていれば、周囲が抵抗感を持たない名前に変えて(やっていることは同じままで)
しれっと始めてしまうのが、賢い導入戦略だと感じました。
「アジャイル」「スクラム」も名前で抵抗感を覚えられることは多いと思うので、別の言いまわしで導入を考えてみるのがよさそうです。
しっかりと段取りをするから、効果的な選択肢の検討ができる
ふりかえりは「集まって話せば何とかなる」ものではなく、事前の設計が成果を左右すると痛感しました。
当日にその場でデータを集めたり、何について話すか迷ったりしていると、
肝心の「これからどうするか(解決策の検討)」に割く時間やエネルギーが残らなくなってしまいます。
事前に重点項目を決め、データを揃え、適切なアクティビティを用意する(段取り)。
この「構造」があるからこそ、チームは表面的な議論を超えて、創造的な選択肢を出し合い、
本当に効果的なアクションを選び取ることができるのだと学びました。
プロダクト作りは、究極的にはチーム作り
チーム作りとプロダクト作りは、共通点が多くあるように感じます。
人間が作る以上、良いプロダクトを生み出すプロセスは、
結局のところ「良いチームを作るプロセス」に帰着するのではないかという気づきがありました。
ふりかえりを通じてチームの状態を良くすることは、回り回ってプロダクトの品質向上に直結する重要な活動だとも言えるなと良い気付きを得ました。
ファシリテーター = 「物事を簡単にする人」
「ファシリテーション(Facilitation)」の語源通り、
「物事を簡単にする人(容易にする人)」という定義は非常にシンプルで勇気づけられるものです。
ファシリテーターは賢い結論を出す人ではなく、チームが話しやすくなるよう「プロセス(話し方)」を整えてあげる黒子役だと割り切れば、難しく考えすぎずに気軽に役割を担える気がします。
良いチームは「会話量」が一定
「長期的にはメンバー全員の会話量が均等になっているのが良いチームの状態」という指標には強い納得感がありました。
特定の誰かだけが喋りすぎている場合、そこで決まった解決策は「声の大きい人の意見」が反映されているだけの可能性があります。
会話量の偏りは、チームの健全性が損なわれている予兆として敏感に捉える必要があります。
現状を変える一番の方法は「自分」を変えること
「他人は変えられない」という大前提に立ち返る重要性を再確認しました。
チームの問題に直面した際、犯人探しをしたり誰かを責めたりするのではなく、まず「自分の反応」を変えること。
自分が変わることでしか、結果的に周囲への影響力を発揮し、状況を好転させることはできないのです。
自分だけでなく、チームとして「やれる範囲」と「やれない範囲」を切り分ける
個人の仕事において「やれる/やれない」を切り分ける人は多いですが、
チーム全体としてその境界線(コントロール可能な範囲)を明確に定義できている組織は少ないのではないでしょうか。
本書にある「サークルとスープ」のように、自分たちで制御できることと、制御できない外部要因を明確に区別することはとっても重要だと思いました。
これにより、改善アクションが現実的なものになりますし、変えられないものに対して無駄に不満を抱くコストを削減できます。
これだけでも仕事はかなりスムーズにできるのではないでしょうか?
感想
たかが「ふりかえり」で、これほどまでに内容の詰まった250ページ以上の本になるのか……と、正直なところ最初は思っていました。
しかし実際に読んでみると、非常に学びの多い、示唆に富んだ一冊でした。
本書を通して、日々私たちが行っているふりかえりが、その場の雰囲気に流されて「なんとなくこなしているだけ」になっている場面も少なくないのではないか、と気づかされました。同時に、少し視点や進め方を変えるだけで、ふりかえりはもっと効果的で価値のある場にできる、という実感も得られます。
ふりかえりは、アジャイルやスクラムに限らず、どのようなチーム・組織でも導入できる、そして導入すべきアクティビティだと感じています。チームを「改善し続ける状態」へと導きたい方に、ぜひ一度手に取っていただきたい一冊です。